どきどき

ここ数日、弟の本棚にあったあさのあつこを読んでいました。最初は「ガールズ・ブルー」のタイトルと、女子高生二人が後ろを向いて少し距離を開けて立っている表紙に惹かれて読み始めました。
あさのあつこと言うと「バッテリー」くらいしか知らなくて、読んだこともNHKでやってたドラマも見たことなかったけれど、バッテリーが野球少年たちの熱い?かどうかはわからないけど、青春小説みたいなものなんだろうなーってイメージが強くって、弟の本棚にも他に「スポーツ・ドクター」なんかがあって、10代の男同士のスポーツとかを通じた爽やかな友情とか青春を書いてる人なんだって思ってました。

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「ガールズ・ブルー」「ありふれた風景画」「あかね色の風/ラブ・レター」と3冊続けて読んだんだけど、どれも少女が主人公で、決して爽やかとは言い難いし、友情とか親友って言葉では言い表せないような関係の、テレビで見るような青春が抜けるような青色だとしたら、くすんだ藍色みたいな、ぱっと見て綺麗とは言えないけれどよく見ると綺麗とはまた違った素敵さがあるようなお話で、何か大きなことをするわけでもなく、大きなことが起きるわけでもない日々で、こういうのすごい好きだなーと思いました。


ガールズ・ブルーで理穂と美咲の世界征服の話も、「感動の物語なんてのにうるうるしてたらやられるよ」っていう言葉も、「あたしたちは負けないのだ」って根拠もないけどなんとかやっていけるっていう自信も、そういう感覚がまだ自分の中にちゃんと残ってて、少女であったことはないけれど、まだ僕も少女でいられるんじゃないかなって思えて、すごく心地いい。
少女が少女の額にキスをするシーンが出てきたり、「ありふれた風景画」では少女と少女がお互いに心と心が惹かれていく話だったり、たぶんこれを読んだ当時中学生だった弟がどう思ったのかってすごく興味があるんだけど、ちょっとこれは聞きにくいです。
自分が中学生だった頃、親の本棚にあった赤川次郎の三姉妹探偵シリーズの最初の巻を読んだとき、三姉妹の末の妹だかが、事件の情報を得るために男とラブホテルに入ってかなりギリギリまでいくシーンがあって、すごくどきどきした覚えがあります。表紙の絵があんなのだったのに、そこで抜けちゃうくらいの初心さがありました。山岡荘八の織田信長にも、当時の自分からしてみたらちょっとえっちな描写があって、そこを読むとどきどきとともに罪悪感とか、こんなところを読んでいるところを親に知られたくない、みたいな感覚があったのを覚えてます。今でもそういう描写あったらどきどきするしね。


ガールズ・ブルーで完全に持って行かれて、ありふれた風景画とあかね色の風はそこまでじゃなかったかなぁと思ったんだけど、ラブ・レターの愛美についさっき完全にやられました。
小学5年生の愛美が、会話をするだけで、光があたって茶色に輝く髪を見るだけでどきどきしちゃう隣の席の男の子にラブレターを書く話なんだけど、出てくる11歳の女の子も男の子も、すごく11歳な感じで、愛美の高校生のお姉さんもすごくお姉さんで素敵で、愛美が初めて書くラブレターが、どんどんどんどんとその日その日の新しいことが書き足されていって、その視点とか言葉遣いとか感じ方とかそういうのが11歳の女の子の心の中を覗いてしまっているようで少し気がひけるんだけど、すごくぽかぽかするしどきどきもする。世の中にはいいどきどきとわるいどきどきがあるんだよ、って愛美が発見したり、人を好きになると夕方よりも朝の方が好きになる、ってことをお姉さんに教えてもらったり、そういうことが11歳の目や頭を通して自分の中に流れこんでくるみたいで、これは読んでいてすごく気持ちが良かったです。