特急便ガール!

ブログをうまいこと活用できないかなーって考えてるんだけど、なにも思いつかないので、しばらくは本とかゲームの感想を書いていこうと思っています。

今日は特急便ガール!を読みました。メディアワークス文庫はこれでまだ2冊目。普段は文庫がどの会社とかレーベルから出ているかなんてぜんぜん気にしてないし、読んでる冊数が少ない人は気にしてもあんまり意味がないと思うんだけど、読んだ冊数少ないくせになぜかメディアワークス文庫だけなんとなく意識してる状態です。意識はしていてもなかなか手が出てなくて、有川浩シアター!とか入間人間とか読んでみたいと思ってるのはいくつもあるんだけど、野崎まどの [映]アムリタしか読んだことなかったです。

さて、特急便ガール!です。あらすじとかは面倒くさいのでAmazonとか参照してください。24歳の元OLが再就職先のバイク便の会社で、長距離の荷物を手で運ぶハンドキャリー便担当として働く話です。

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どこでもドアが実際に存在するなら、人の移動も物資の輸送も瞬時にできちゃいます。どこどこに行きたいとドアの前で唱えて、ドアノブをガチャリと回してドアを開けるだけで、その先はもう目的地です。実はどこでもドアのドアノブは、そのドアノブを握った人の思念を読み取る機械になっていて、行きたい場所を音声入力しなくても、もしくは音声入力したとしても、その人が行きたいと思っている場所とこの場所を繋げる仕組みになっています。だから、のび太が「しずかちゃんち」に行こうとしてドアの間でそう唱えたとしても、ドアノブがのび太の思念を読み取って、わざわざしずかちゃんちのお風呂場に繋げてくれるわけです。

この話の主人公は、ハンドキャリー便を始めたことで不思議な能力を身につけます。荷物を運ぶために新幹線の自動ドアをくぐると、その先は新幹線の中でなくて見知らぬ庭に繋がったりします。時をかける少女ならぬ、距離をかける少女です。そうやって、何百キロという距離を一瞬で飛び越えてしまうこともあれば、飛び越えないこともあるし、飛び越えた先がどこなのか自分にもわからない、なんとも中途半端な能力です。

ハンドキャリー便担当として働く中で、荷物の集荷を頼んだ人、着荷先の人、いろんな人と出逢い、そこにはいろいろなドラマがあります。今の宅急便のような、一度に大量の荷物をトラックに積んで、目的地に運ぶのではなくて、もっと近く、人と人とを荷物を介して結びつける、ハンドキャリー便とはそういうものでもあります。

こういう「縁」のようなものを書くのがすごいうまいなーって思いました。荷物を運ぶ主人公は、あくまで他人でしかないけれど、ハンドキャリー便っていう人に近い配達をする中で、その荷物に込められた想いとか、届ける人受け取る人の想いとか、そういうものを、他人という立場から知って後押ししてく、そういう主人公がものすごくかっこよかったです。

登場人物がまた個性的で魅力的で、読んでいて飽きなかったです。バイク便の会社の社長や部長や同僚に、元働いていた会社の社員やら、集荷を頼んだ人に着荷先の人に、みんな魅力的で、それぞれに想いを抱えています。

そんな想いを荷物とともに運ぶ、24歳元OL、吉原陶子の活躍が!読んでいてあったかい気持ちになるお話で、自分以外の物語に対して涙もろい自分は、終盤には目に涙を溜めてうるうるしながら読んでました。